ハラカミレイさま
2011年08月06日
「なんで、ちくわなん?」
(『わすれもの』CDを見て)
「えっ〜と、あの〜、やね。朝、家を出たらな〜、あの〜、ちくわがあってん。まぁ、あんな感じで」
「???」
「ちくわが、なっ、一本、猫かな〜って、思ったけど、かじった痕もないし、、、」
「???」
「誰か、わすれていったんやって、ぜったい、めっちゃおもろいやろ〜」
「ちくわ〜??? わすれもの〜???」
「ほんまは、もっと、安もんの、4本入りとかの、茶色いちくわやったんやけど、なっ、撮影には白くて大きい煮込みちくわの方が写りがええから、、、」
路に落ちてたちくわにインスパイアーされ、CDジャケットにまでしてしまうところが、何ともレイちゃんらしい。と、いうか、そういうところが好きだった。
彼は、ほんとに楽しい酒飲みで、まわりの人たちから愛されていた。酔ってどろどろになっていく姿が面白くって、私のおごりでどんどん赤ワインをついでたっけ。最後は唇を真っ黒にして、陸に上がったフナみたいに、床に倒れ込んで、グーーー。
でも、そんな一面に反し、
彼の作る音は、
まるで、
雨上がりに浮かぶ住宅地の虹を、
夕焼けに染まる疎水の水を、
雪の夜の歩道の空気を、
そして、跡だけ残った夏の飛行機雲を、
捕え、
おそるおそる糸に紡いで、
慎重にハタにのせ、
丁寧に織り上げたよう。
我が身を、ずっと、それに、 、包まれていたくなるような、
そんな音。
繊細で、はかなくて、壊れてしまいそうでいて、美しく、でも近くって、気持ちいい。
だから、時間もかかる。
「僕な、ほんまはライブなんかしたないねん。家にいてCDだけ作ってたいんや。でも、そうもいかへんから4年もかかってしもうた」
『LUST』をくれたとき、そう言ってたけど、あれから6年も経ってしまったね。そろそろ、自身の新譜出るかな、なんて思ってたけど、、、Yanokamiの新譜を待つとするよ。
これから先、
大阪のおでん屋で、
讃岐のうどん屋で、
近所のスーパーマーケットで、
ちくわを見るたび、
レイちゃんのこと思い出すだろうな。
そういえば子供のとき、ちくわの穴の向こうに、違う世界があると思って覗いたな〜。レイちゃんは、今頃、ちくわの穴の向こう側かな。そう思うと、この悲しみも、いつかは、笑いにでもかわるだろうか。
p.s.
ごぼうにインスパイアーされた曲もあるね(笑)。