東京〜京都〜パリ
2008年03月29日
今にも桜が咲き出しそうな3月23日、晴れ。眠い目を無理矢理こすりなんとかベットから這い出し、湯気の立つコーヒーを飲み干す間もなく身支度を整えタクシーに飛び乗る。3時間後には品川。そこからさらに1時間、電車を乗り継ぎ新百合ケ丘。遠い〜。昭和音楽大学へつづく道は同じ目的の人たちがぞろぞろぞろ。
今日は待ちに待ったピナバウシュの公演。「パレルモ パレルモ」は初演からすでに20年、ピナの代表作のひとつ。しかしファーストシーンの舞台設備があまりに型破りで、、、日本での公演がかなわずにいたのだがこの大学の新しい劇場が待ちに待った日を実現させてくれた。多謝。
90分〜休憩〜70分、げっ、長い、起きていられるか?私?すでに、眠い〜。
幕が開けるとブロックで積まれた大きな壁がゆら〜り、ゆらり、と、ゆ〜っくり動きだし次の瞬間、もの凄い音とともに崩れ落ちる。その衝撃と同時に砂埃が立ちこめうわ〜、げほっ、げほ、そしてその砂だらけの瓦礫をパレルモの街に見立て様々な人間模様が織りなされていく。途中大勢の団員が手にかけた籠からゴミをまき散らすシーンが私も2度訪れたパレルモの光景を鮮やかに蘇らせてくれた。瓦礫、ゴミ、砂埃、けん騒、排気ガス、クラクション、駄目男、そして貧困。言葉に置き換えればどれもネガティブなのにパレルモは空も、海も、街も、人も、ぼこぼこの車も、頭上で揺らぐ洗濯物でさえも哀しいほどに美しい。いや哀しいから美しいのか。ピナの舞台は人間の悲哀が美しいもにに繋がっていく事をいつも丁寧に描き出していく。まだ学生だった20年近く前、京都の劇場で初めて観た「カーネーション」もそうであった。公演中、今まで観たピナの作品やパレルモの街が頭の中で交差しつづけ結局眠る事なく私の脳みそは忙しく働いた。カーテンコールは4度もつづき拍手はなりやまず。膝に乗せたパンフレットは砂砂で、鼻の中に吸い込んだ砂の匂いが帰りの電車の余韻となった。今日は絶対シチリア料理!シーフードのフリット盛り合わせに、カラスミ、なければイカスミののロングパスタ、サイドはトマトサラダできゅっと冷えた白ワイン、プラネタがいいがコルボで我慢するなどと大騒ぎしながら電車を降りるも適当なレストランに断られ、泣く泣く表参道のビストロへ。ティピカルなビストロ料理とグラスのシャンパーニュ、ヴァケラスの赤でお腹をなだめる。パスタにありつけなかったのは心残りでならぬ。そういえばアムステルダムでピーターグリーナウェイのグロテスクなオペラを観た帰り、閉店前のステーキハウスに飛び込み、血の滴るTボーンステーキを注文したっけな。私の頭ぐらいある、でっかいのだったな〜。
脳を揺るがすような舞台を観た後は、イメージの繋がった腸を満たす食事を求めてしまう。
人の身体は何て単純だろう。
翌朝もこれ又早起きで、コーヒーは何とか飲み干し京都に戻る。
あわてて食材を買い出しNHKに向かう。
今回は新玉ねぎがテーマということで、
新玉ねぎと牛肉のタイ風サラダをつくる。
詳しくは3月31日の放送またはNHK京都放送局のHPで。
次の日、パリ帰りのご夫妻から熟成ミモレットとレストラン直送フォアグラのパテを頂く。薄く切った新玉ネギとたっぷりのパテ、ガリッとひいた黒こしょうを黒パンのカンパーニュにはさみワインをお供にかぶりつく!あ〜気分は日差しの差し込む春のパリ、ランチタイムのカフェテラス。小さな一皿でなんちゃって旅行を楽しむ。こんな小さな一皿でも脳と腸はしっかり繋がっているようだ。人って面白くできている。