祇園祭、還幸祭2016
2016年08月01日
「京都は年がら年中、お祭りやってるな〜」東京の友人たちから良く聞く言葉である。そう、確かにこんな暑い暑いときにも祇園祭は華やかにそして粛々と行なわれる。毎年毎年、町衆の小さな営みを飲み込むようにもう1000年以上。
今年の巡行は珍しく日曜日、お店が休みなのでやっと観られる!と、暑い最中の山鉾巡行は特等席のテレビ前で見るとし、夕方から行われる還幸祭を一度ゆっくり追いかけたいと思っていた。
神幸祭、還幸祭の御神輿は八坂神社の神事で祇園祭の山鉾巡行とは成り立ちが異なる。
その御神輿は三基、八坂さんに祭られているスサノオノミコトとその妻、子供の御霊をそれぞれ乗せた中御座、東御座、西御座である。
神道の神様たちは氏子の元に降りてきて願いをきいてくれる太っ腹。神幸祭によって寺町の御旅所に降りてこられすでに7日目、そろそろ皆の願いを一杯きいて還られる時間が近づいてきた。今日の24時までには八坂さんの本殿に戻らないと行けない。まるでシンデレラのよう。巡行ルートと到着予定時間を確認しながら御神輿を追いかける。
18:00前に御旅所前に着く。中御座はすでに出発していたが東御座、続いて錦市場に向かう西御座の出発を見届ける。
19:00前に錦高倉辺りにやってくる西御座を運良く入った店でビールを飲みながら迎える。特等席。その後、別用を済ませ、夕食をとり。21:00前に寺町通りで中御座、そのまま通り沿いのカフェで東御座を待ち、御旅所へ。
ブレーメンの音楽隊よろしく八坂さんまで着いていく。
八坂さんの石段下の差し上げを観ることなく、急いで南門に向かうも一般人は入れず、迂回して円山公園入り口から本殿を目指して早歩き。到着すると22:00頃。
中御座がすでに最後の時間を迎え、静々と舞殿に納められた。
神輿の上に束ねられていた一見九条葱と間違えそうな根付きの稲を担ぎ手の男衆に渡し解散。
すぐに東御座が南門をくぐり境内を勇ましく時計回りに3周、かけ声とともに「差し上げ」頭の上にまっすぐ腕をのばし神輿を支え、まるでウェイトリフティング!
最後はやはり静々と舞殿に納められた。
最後の西御座がでかい!他の神輿より一回り、担ぎ手は倍ほどいるのではないだろうか。威勢良く三周する姿は男だらけの洗濯機、前を通るたびに砂埃と男汗と体温で、もわ〜っとなる。モッシュピットの真横にいるみたい。そして最後はやはり静々と舞殿に納められるのだ。
三基の神輿は寸分の狂い無くまっすぐに並べられ、やがて境内の明かりが全て落とされた。うっすらした月明かりの中、琵琶の音だけが響き、神官たちが本殿より神輿に向かった。神輿に安置された御霊を何かに移すのか、それとも何かごと運ぶのか?それはベールの向こうの秘密とされている。柏手が三回続き、やがて神官たちが本殿に戻る。しばしの静寂のあと本殿から柏手が聞こえる、と、雅楽の演奏が始まり境内の明かりが戻った。それはまるで天照大神が天岩戸を開けたかの様。夕方から続いた神輿の喧噪の後、静寂に包まれた御霊写しの儀式が、より神聖に思われ背中がぞくっとしてしまった。ここには喜怒哀楽のすべてが織り込まれ、放出する場ともなっている。祭りというエンターテインメントを通して人々が繋がって町が造られていることを実感した。祭りとは人類が創造した一番の発明。そこには人間が平和に生きていくための知恵や力、教えが有るのだと。